世界遺産の島で繁殖する海鳥「ヒメクロウミツバメ」の渡り経路を解明
2025年12月10日
北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)の中原亨学芸員と長崎大学ほかで構成される共同研究グループは、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産の一つである小屋島で繁殖する希少海鳥ヒメクロウミツバメの渡り経路を世界で初めて明らかにしました。この成果は、国際学術誌「Bird Conservation International」にオンライン掲載されました。当館では、本研究概要を特別展示いたします。
展示期間:令和7年12月11日(木)~令和8年1月31日(土)
場所:北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館) エントランス
1. 研究の要点
▶ 小屋島で繁殖するヒメクロウミツバメがインド洋のアラビア海まで渡っていることを初めて解明
ヒメクロウミツバメは環境省レッドリストで絶滅危惧II類に選定されている希少な海鳥です。小屋島は、世界遺産の中心をなす沖ノ島(福岡県宗像市)のそばにある小さな島です。この島で、2022年夏に本種を捕獲し約0.5gの追跡機器を装着して放鳥、翌年夏に4羽の再捕獲に成功しました。機器を回収し、記録されたデータを解析すると、追跡した個体は秋にインド洋のアラビア海まで移動し、春に小屋島へ戻る壮大な渡りをしたことが明らかになりました。冬の間はアラビア海を広く利用していることもわかりました。
▶ 大規模な東西移動を行う珍しい例
日本にやってくる渡り鳥のほとんどは南北方向に渡りを行いますが、ヒメクロウミツバメは南北だけでなく、東西方向にも長距離の移動をしていました。このような動きをする渡り鳥はとても珍しく、北西太平洋からインド洋にかけての海鳥の大規模な海上移動は、これまで発見されていなかった新たな季節移動パターンといえます。